191010 ジャック・アタリ / 『いま、目の前で起きていることの意味について』 読書グラフィ

読書グラフィ 今日読んだ本

ジャック・アタリ(編著)、岩澤雅利、木村高子、加藤かおり(訳) / 『いま、目の前で起きていることの意味について 行動する33の知性』



●2050年には、老化、肥満、新種の病気などによって

 健康のための出費がかなり大きくなっているだろう。


 なかでも費用がかさむと思われるのが、

 最先端の装置、エレクトロニクス機器と遺伝子治療の機器、

 人工器官といった医療関係のもので、

 これらは医師による人的サービスに取って代わるだけでなく、

 自動車、洗濯機、テレビ、パソコン、携帯電話の後を継ぐ、

 購買意欲をそそる製品になるだろう。



 2050年においてもおそらく、

 地球上の半分は貧しい暮らしを続け、

 医薬品や衛生用品を無償あるいは廉価で提供するような

 社会保障体制が浸透するには至っていないだろう。


 実際、貧しい人々のうちで治療を受けられるのは、

 現在のマラリア結核エイズ鳥インフルエンザ

 A型インフルエンザのような、

”豊かな人々に拡大するおそれのある”伝染病にかかった者に限られるだろう。



●医療に金を使うことは消費ではなくて投資である。

 保健衛生を負担と考えるのをやめ、

 将来を約束するものとみなすようになれば、

 人類は全く別の歴史に踏み出して、これからも力強い成長を続けるだろう。


 人類がこうして少しずつグローバルな政体を形作っていくなら、

 国単位の社会保障はグローバルな社会保障に発展し、

 その役割を果たすだろう。


 だがこの役割を演じる可能性がより高いのは、

 民間ないし公的な保険会社である。


 保険会社は、医師が患者の日常行動とリスクを知ったうえで

 その患者に合った治療を行なうのと同じように、

 保険料を区別すべきだと言うだろう。


 ICを組み込んだり遺伝子情報を記載したりした

 身分証明書が不正確なままならば、

 リスク分散方式はこれからも維持される。


 逆に、一人ひとりのリスクを

 現在よりもきめ細かく把握できるようになれば、

 保険料の差別化はますます進むだろう。



●行き着く先には何が待っているのか?


 たとえば、肝臓の再生に必要な幹細胞が特許取得の対象になった場合、

 人間の肝臓を再生する権限は特定の私企業に握られるのだろうか?



●いずれ人間は怪物を作りだすだろう。


 動物をもとにした怪物

(たとえば、危険な高熱を使う作業を人間のかわりに行なう

 火とかげ(サラマンダー))、

 治療用の怪物(移植用の器官や臓器)、

 そして、ロボットや動物の体に人間の脳を埋め込んだ怪物。


 豊かな人々が税からの避難所にするタックスヘイブンが存在するように、

 クローンや怪物の自由な作製が許される国や地域ができることだろう。



1920年頃にラジオが出現すると、多くの音楽家が出演を拒否した。


「ラジオで音楽を無料で聴けるようになったら、

 誰もコンサートに来なくなり、

 レコードも買ってくれなくなるではないか」と思ったからだ。


 実際には反対に、ラジオを聞いてコンサートに行き、

 レコードを買う人が増えた。



●私の意見では、世界は宗教社会にも非宗教社会にも向かっていない。

 むしろ個人主義的になっており、

 それは私が、おもちゃの組み立てブロックになぞらえて

「レゴ宗教」または「自我(エゴ)の宗教」と呼ぶものを生み出すだろう。


 つまり一人ひとりがユダヤ教イスラム教やキリスト教や仏教から

 さまざまな要素を抜き出して組み合わせ、

 個人的な信仰を確立するようになるのだ。



●また、労働もまた、

 レゴのブロックを組み合わせたようなものになるだろう。


 各人がみずからの雇用主となる度合いはどんどん増し、

 個人事業主として芸術作品や消費財などを生産し、

 ほかの人と共同で作業をするため、

 自分が作った商品をネットワークに乗せるようになる。

「ピアツーピア」が産業の標準構造になるだろう。


 それはたとえばクラウド・コンピューティングにもみられる。

 企業はもはやシステムの所有者ではなくなり、

 連結したサービスの「雲(クラウド)」にアクセスすればよくなり、

 複雑な設備の管理から免れられるのだ。



ピンク・フロイド『タイム』

https://www.youtube.com/watch?v=dSgP4ZWBRPE



#読書 #人生訓